1. HOME
  2. メディア
  3. 藤嶺info
  4. 校長ブログ~行って参りました!「遊行の聖 弔いの心」~

info-a1169 校長ブログ~行って参りました!「遊行の聖 弔いの心」~

ページタイトル
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
校長ブログ~行って参りました!「遊行の聖 弔いの心」~
8/25付校長ブログでお知らせした横浜能楽堂主催公演「遊行の聖 弔いの心」が、10月16日に横浜ランドマークホールにて開催されました。番組は、狂言語「文蔵」、声明(しょうみょう)「時宗薄(すすき)念仏」、そして能「實盛(さねもり)」という三部構成でした。会場は多くの来場者で満ち、古典芸能の奥深さと、日本人の精神文化に触れる上質なひとときとなりました。
 声明「時宗薄念仏」は、時宗法式(ほっしき)声明研究所の所員によるもので、抑揚と強弱のある声の響き、歩みながら称えながら打ち鳴らす鉦鈷の音が会場を包み込みました。「薄念仏」は、古来より時宗に伝わり、遊行寺では年に一度の宗祖一遍忌のみでお勤めされるものですが、今回は公演の中でお勤めされましたので、たくさんの方々がご覧になりました。観覧者の多くが薄念仏の崇高な響きの中に「他力不思議の力」を感じることができたことでしょう。
 続いて演じられた能「實盛」では、本校卒業生であり、重要無形文化財総合認定保持者でもある金春流シテ方能楽師山井綱雄さんがシテを務めました。
「實盛」は以下のような内容です。加賀国篠原の里で念仏を勧める遊行他阿上人(遊行十四代太空上人)の下に日参する老人は、上人以外には姿が見えません。この老人は、この地で戦死した斎藤別当實盛の亡霊でありました。その追善法要を営むと、實盛の霊が現れて念仏に加わり和讃を称え討死の様を語るというものです。
 山井師の演技は、力強さの中に深い静けさを湛え、人の生と死、そしてその魂の行方について静かに語りかけてくれるものでした。
 この曲に登場する僧は、時宗宗祖一遍上人の教えを受け継ぎ、諸国を巡って念仏の道を説いた遊行上人です。人々の苦しみや悲しみに寄り添い、その命を弔う心——まさに「遊行の聖」の姿です。現代を生きる私たちもまた、日々の生活の中で他者の思いに心を寄せ、命の尊さを感じ取ることが大切なのではないでしょうか。
 能や声明は、単なる古典ではなく、先人たちの祈りや生きた証を今に伝えるものです。本校でも、茶道教育をはじめ、こうした精神に触れ、心を耕す時間を大切にしています。芸術には、人の心を豊かにし、他者を思いやる力があります。「遊行の聖」の教えと「弔いの心」を胸に、互いに支え合いながら歩む日々を、これからも大切にしていきたいと思います。
  • このエントリーをはてなブックマークに追加