校長ブログ~「遊行の聖 弔いの心」~

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藤嶺 広報

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本校卒業生であり、金春流シテ方能楽師山井綱雄さんは、5年前の2020年11月6日(金)に「第十五回記念 山井綱雄之會~困難に立ち向かう全ての人々へ~」を国立能楽堂にて催しました。そのとき山井師が舞ったのは「誓願寺(せいがんじ)」でした。謡曲「誓願寺」は世阿弥作と言われ、その概要は以下のようです。

 熊野で霊夢を受けた一遍上人(ワキ)は都に上り、誓願寺で「南無阿弥陀仏六十万人決定往生」の札を配っていると、群衆に交じって一人の女(前シテ)が現れる。札に書かれた「六十万人決定往生」の文言を不審がる女。一遍はそんな彼女へ、これは念仏の教えの正しさを保証する熊野権現の託宣の言葉だと教え、あまねく一切の存在へと開かれた浄土教の真髄を明かす。その言葉を聞いて深く帰依した女は、やがて、堂内の額を上人自筆の名号(南無阿弥陀仏)に代えてくれと願い出ると、自らを和泉式部の化身だと明かし、境内の墓塔へ姿を消すのだった。額を書き上げた一遍。するとそこへ、今や歌舞の菩薩と変じた和泉式部の尊霊(後シテ)が現れた。式部は、罪や穢れを抱えた者すらもが救われるという念仏の功徳を讃嘆して舞を舞うと、上人の徳を讃え、現れた聖衆とともに一遍自筆の名号を拝むのだった。

 山井師が「誓願寺」を舞う直前の演目は、「時宗踊躍(ゆやく)念仏」でした。なんと、国立能楽堂で時宗僧侶が踊躍念仏を勤めたのです。もちろん「山井綱雄之會」だからこそ実現したことであり、山井師がプロデュースしたからこそ実現したことですが、「踊躍念仏」に引き続き謡曲「誓願寺」という番組は、歴史的なことであり、史上初めてのことであると、私はいたく感銘したのです。

 さて、来たる10月16日(木)に、横浜能楽堂企画公演「遊行の聖 弔いの心」が開催されます。番組は、狂言のあとに、時宗僧侶による「薄(すすき)念仏」のお勤め、それに引き続き山井師がシテを務める「実盛(さねもり)」が上演されます。
 「薄念仏」は、一遍上人が全国を遊行していた際に、奥州江刺にある祖父河野通信公の墳墓を訪れ、その際に行われた踊り念仏を時宗では「薄念仏」と称しています。
 謡曲「実盛」は、遊行十四代太空上人が、斎藤別当実盛の霊を鎮めたとの巷談をもとに世阿弥が作ったものです。
 山井師がおっしゃるには、「第十五回記念 山井綱雄之會」を観覧した横浜能楽堂関係者が企画を考えたとのことです。
 今回は横浜で「踊り念仏&能の舞」が、「時宗僧侶&卒業生山井綱雄師」で実現するのです。
 興味のある方は、以下のURLをクリックしてみてください。
 
 https://yokohama-nohgakudou.org/schedule/?p=5672

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